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2020-4-1 賃貸不動産(ビル、マンション等)で新型コロナウイルスの感染が確認された場合の法的対応

M&P Legal Note 2020 No.4-1

賃貸不動産(ビル、マンション等)で新型コロナウイルスの感染が確認された場合の法的対応

2020年4月13日
松田綜合法律事務所
不動産チーム

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1 はじめに

自社で所有又は管理する賃貸不動産(建物)の入居者に新型コロナウイルスの感染が確認された場合、建物の消毒や他の賃借人への情報開示の要否等、賃貸人あるいは管理会社はどのような対応をとるべきでしょうか。

この点、自社で所有又は管理する賃貸不動産に新型コロナウイルスのような感染力の高いウイルスの感染者が確認された場合という極めて例外的な事例についてはそもそも想定されていないことから、かかる場合の賃貸人又は管理会社がなすべき対応について賃貸借契約書に定められていることはありません。

また、本日(2020年4月10日)現在、賃貸不動産の入居者の感染が確認された場合の対応について、国土交通省をはじめとする行政機関による通達、事務連絡等もなされていません。

そこで、今回は自社で所有又は管理する賃貸不動産の入居者に新型コロナウイルスの感染が確認された場合の賃貸人又は管理会社のなすべき対応について、法的見解を踏まえてご説明いたします。

2 保健所への連絡、相談及び消毒の実施

自社で所有又は管理する賃貸不動産(建物)の入居者に新型コロナウイルスの感染が確認された場合、直ちに近隣の保健所に連絡し、その後の対応について相談する必要があります。

そのうえで、保健所の指示の下、感染者が利用したと考えられる建物内の各場所について至急消毒を実施する必要があります。消毒を要する場所は、玄関、廊下、エレベーター、集合ポスト、ごみ集積所等が考えられますが、当該建物に合わせた検討が必要になります。

なお、新型コロナウイルス感染症は、当初二類感染症相当と指定され、それを前提に感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律に定める措置(消毒命令、就業制限等)を行うことができるとされていました(同法第27条、第18条)。ところが、2020年3月26日付で、新型コロナウイルス感染症を指定感染症として定める等の政令の一部を改正する政令(令和2年政令第60号)が出され、一部、一類感染症の場合の措置が適用されるようになった結果、感染症のまん延を防止するため必要があると認められ、かつ消毒により難いときは、都道府県知事が、建物の立入制限や封鎖などの建物に係る措置を行うことができるようになりました(同法第32条)。そこで、当該措置を回避するためにも、保健所の指示の下、早期に消毒を実施することは極めて重要です。

3 各賃借人への情報開示

続いて、当該建物に感染者が発生した旨の情報を、他の賃借人に開示することが必要となるとなるのでしょうか。また開示する場合、どのような方法をとるべきでしょうか。

かかる問題は、賃貸借契約上、賃貸人が賃借人に対して負担する「善管注意義務」に、他の入居者に新型コロナウイルスの感染が確認された事実を開示する義務が含まれるか否かの問題となります。

この点、各賃借人からすると、自身が入居する建物において感染者が発生した事実は、感染予防の観点からその後の対応(建物の利用を控える等)に極めて重要な情報であり、賃貸人又は管理会社から入居建物において感染者が発生した事実を提供、開示されることは、賃貸借契約を継続するに際し必要不可欠といえます。

かかる観点から、感染者が発生した事実(賃貸借契約を継続するに際し必要不可欠な情報)を各賃借人に対して提供、開示することは、賃貸人が各賃借人に対して負担する善管注意義務の範囲に含まれると考えます。そのため、感染者発生の事実を把握しながら、提供、開示しなかった場合には、後日賃借人から善管注意義務違反であるとして争われたとき、義務違反と認定される可能性が高いと考えます(善管注意義務違反と認定された場合、賃借人からの損害賠償請求の根拠となりますのでご注意が必要です)。

なお、感染者自身のプライバシーや個人情報の保護の視点は、感染者発生の事実を各賃借人に提供、開示すべきでないとする方向の根拠となりえますが、後述の通りプライバシーや個人情報に配慮し、入居者や部屋番号が特定されることのないよう工夫することで対応可能であり、やはり感染者発生の事実は提供、開示しなければならないと考えます。

一方、感染者との関係においては、プライバシーや個人情報を害することのないよう範囲に配慮して提供、開示するのであれば、そもそもプライバシーや個人情報を侵害しておらず、また他の賃借人に対する善管注意義務を尽くすためやむを得ず感染者発生の事実を開示せざるを得なかった点を踏まえ、感染者自身に対する善管注意義務違反や不法行為は成立しないと考えられますので、仮に感染者との間でトラブルとなったとしても、賃貸人又は管理会社の責任は生じないものと考えます。

以上のとおり、賃貸人又は管理会社は、賃貸不動産(建物)において感染者が発生した事実について、各賃借人に提供、開示すべきと考えます(善管注意義務の一環として提供、開示義務が発生すると考えます)。

それでは、実際の提供開示はどのような方法で実施すべきでしょうか。

上述した、感染者が発生した事実(賃貸借契約を継続するに際し必要不可欠な情報)を各賃借人に対して提供するという趣旨からすると、各賃借人の目につくよう、建物内掲示板やエレベーター内で掲示する方法、及び各賃借人に個別に連絡文を送付する方法が適切です。

そして、掲示内容については、感染者のプライバシーや個人情報に配慮し、

・建物入居者に新型コロナウイルスに感染された方がいることが明らかになったこと

・保健所に相談のうえ、保健所の指示を受けて共用部を消毒したこと

・その他の情報については感染者のプライバシーや個人情報の観点からお知らせすることができないこと

等とすることが考えられます。

以上、自社で所有又は管理する賃貸不動産(建物)の入居者に新型コロナウイルスの感染が確認された場合の対応についてご説明いたしました。

開示方法につきましては、当該建物の構造や入居状況によって個別に検討する必要がありますので、個別のご相談につきましては、弊所不動産チームまでいただければと存じます。

 

<新型コロナウィルスに関するリーガルノート>

 


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松田綜合法律事務所
不動産チーム
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この記事に記載されている情報は、依頼者及び関係当事者のための一般的な情報として作成されたものであり、教養及び参考情報の提供のみを目的とします。いかなる場合も当該情報について法律アドバイスとして依拠し又はそのように解釈されないよう、また、個別な事実関係に基づく日本法または現地法弁護士の具体的な法律アドバイスなしに行為されないようご留意下さい。

 

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