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2020-1-1 中国における新型コロナウイルスに関わる法律問題(1) ――外資企業に対する支援政策の利用――

M&P Legal Note 2020 No.1-1

中国における新型コロナウイルスに関わる法律問題(1) ――外資企業に対する支援政策の利用――

2020年3月2日
松田綜合法律事務所
中国弁護士 徐 瑞静

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1 はじめに

2020年春節(旧正月)の期間中に、新型コロナウイルスの感染が中国全土に拡大した結果、中国政府は、国を挙げて疫病に立ち向かうべく、人口の大規模な流動や集中を避けるため、自主的な在宅隔離、春節休暇の延長等の予防、抑制措置を執りました。しかし、厳格な予防、抑制措置は民衆の生命の安全を守ると同時に、国内の経済活動や企業経営に多大な不便や困難をもたらしました。

中国における報道によると、春節期間中、新型コロナウイルスの影響により、中国国内においては、医薬医療、オンラインゲーム等の業界が利益を得た一方、飲食、旅行、交通、娯楽等の業界は大きな打撃を受けたとされています。

そのような状況を踏まえ、政府は、新型コロナウイルス発生後、世界保健機構(WHO)が中国の新型コロナウイルスを「国際的に注目される突発的公共衛生事件」と定めて以来、新型コロナウイルスが外資企業と外資投資活動に与えた衝撃やマイナス影響を最小限に抑えるため、当面、国家から地方のレベルに至るまで、相次いで支援政策や救済措置を打ち出しています。

以下は、外資企業に関わる中国政府の支援政策に関する情報をまとめたものです。

2 支援政策、通達の公布・実施

(1)中央政治局常務委員会

2月12日、中央政治局常務委員会は、新型コロナウイルスに対する現状分析、予防、抑制のための会議を開き、中央総書記習近平が、貿易投資について、大型プロジェクトの着地の推進、外商投資法及び付属法令の実施、外商投資環境の最適化、外資の合法権益の保護に言及しました。

(2)中国商務部

一方、中国商務部も、上記中央政治局常務委員会の開催前の2月10日、既に、各地に外資企業に対するサービス及び保障を強化する旨の通達を発しており、近時、各地において、外資企業の支援政策が相次いで打ち出され、外資企業が困難な時期を乗り切ることを後押ししています。

中国商務部の発表によると、今後、地方商務部門及び地方政府とともに、外資企業が投資、生産、経営の過程において直面する問題の的確な解決を図り、新型コロナウイルスが流行する期間中は、本土企業が享受している関連優遇政策及び支援政策については、外資企業もカバーすることとし、内資企業も外資企業も平等に政府関連政策による恩恵を享受できるとされています。また、外資企業に対しては、十分な財政、金融、税収、社会保障、就業及び政府調達等の各種援助政策の活用が可能となることを明言しました。

さらに、2月18日、中国商務部は、外資を安定させ、消費を促す通達を発表し、対外貿易管理手続きの簡易化、法律サービスの強化、企業リスク低減の支援のほか、新型コロナウイルスにより、関連機構が貿易企業や海外プロジェクトの実施主体に対する契約を履行できなかったことの不可抗力事実証明の無償発行等、多方面から事業再開を支援することを明言しています。

(3)地方政府及び商務部門

上記の中央レベルの政策、通達を除き、外資企業が難局を乗り越えられるよう、各地方政府は続々と地方レベルの支援政策を打ち出しており、外資企業の生産復帰の再開を助け、また、外国投資プロジェクトの着地を推進しています。

例えば、上海市政府は、新型コロナウイルスの発生後、多くの項目に亘る政策を発表していますが、当面の新型コロナウイルス流行期間中、上海が打ち出した関連政策については、外資企業と国内企業とを平等に取り扱うことにより、外国投資家及び外国投資企業に対して、公平で公正なビジネス環境を提供し、より良い待遇が確保されることを強調しています。

また、山東省政府は、外商投資企業の生産再開及び外商投資を促進するために、担当部署、管轄範囲を明確にした上、外資企業の防疫物資の調達、与信支援の強化、関連税金の減免、滞納税金や社会保険料の延期納付等の具体的な措置を公布しました。

(4)中国自由貿易試験区

近時、上海、山東、天津、遼寧等の自由貿易試験区及び国家レベル経済技術開発区において、続々と、外商投資企業に対する追跡サービスの強化、外国為替金融サービスの提供、重要な経済貿易推進活動の早期計画等、企業の生産回復援助のための措置が遂行されています。

上海自由貿易区臨港新片区における政策を例に挙げれば、企業の負担を軽減するために、所轄区域内の賃貸料の減免、企業貸借のサポートなどの通常措置の他にも、集積回路、人工知能、バイオ医薬、民間航空等の重要産業分野において、企業が享受しうる産業支援政策を前倒しして実現し、企業における疫病発生時の資金流動の困窮を緩和する措置が取り込まれています。そのほか、新型コロナウイルスが原因で流動資金の不足を来し、貸金返済期限に遅延した中小企業に対して、特別支援資金を設置し、信用不良の経歴がない企業には、簡易手続きによりそれを申請できるようにしています。

(5)現時点の投資現状

2月17日、中国商務部は、今年1月までの中国に対する投資情報として、ほぼ昨年度並みの安定成長が続いており、主な投資先であるシンガポール、韓国、日本の投資は、昨年度同時期に比べ、それぞれ増加したと発表しました。

また、一部の外資系企業の調査結果においては、現段階の新型コロナウイルスが外資企業の生産経営に及ぼす影響は、なお限定的と見られています。みずほ銀行(中国)有限公司の竹田和史頭取は、中国の巨大な市場空間、整備された産業構造及び原材料供給能力が、外資企業の中国に対する投資を誘致する重要な要素となっていると述べるとともに、中国経済の基礎条件や潜在能力の底強さに照らし、中長期的には、中国の経済発展の見通しに自信を持っているという意見を表明しました。

3 まとめ

中国においては、一貫して、外商投資が中国の経済発展を推進するために不可欠な重要な原動力であるという不動の認識のもとに、外商投資に対し、より一層、良好な投資環境を実現するため、新たな「外商投資法」及び「外商投資法実施条例」並びにその他の付属法令が、2020年1月1日から実施されています。しかし、新法が発効・実施して間もなく、新型コロナウイルスが発生・拡大したため、取り分け、今後、外商投資に関連して、いかなる政策が打ち出されるか注目される状況になっています。中央政府及び地方政府までが、多くの支援政策を広く推進する中にあって、企業は、絶えず、国家及び地元政府の関連部署が公開する政策、通達、通知等に注目し、それらを利用して管理体制を充実することにより、企業のリスク削減に努めることが不可欠であると思われます。その目的のため、このニュース・レターにおいても、今後、より詳細な情報を共有できるよう、随時、その発信に努めます。

 

<新型コロナウィルスに関するリーガルノート>

 

 


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