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2018-4-1 幼児教育と認可外保育施設の関係

M&P Legal Note 2018 No.4-1

幼児教育と認可外保育施設の関係

2018年5月18日
松田綜合法律事務所
弁護士 岩月泰頼
弁護士 田中裕可

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第1 はじめに

子どもに、生涯にわたって心豊かに人間らしく、逞しく生きる力を身に付けさせるため、「幼児教育」に力を入れる親が増えてきています。それに伴い、「幼児教育」として、幼児の語学力・論理力・思考力・運動力・音感・IQなどを伸ばすことを目的とした遊びや学習を提供する塾・スクール・施設を運営する事業者も増えてきました。

この「幼児教育」の対象児童は、主に1~6歳の未就学児となっています。

このような幼児教育を提供する施設は、一方で教育施設の側面を持ちますが、他方で保育施設的な要素を併せ持つため、児童福祉法による規制を受けるかどうかが問題となります。すなわち、幼児教育を提供する施設であっても、児童福祉法によって規制されている「保育所」ないし「保育事業」とされれば、「認可外保育施設」として、同法で定められた基準を守らねばならず、また届出や様々な報告なども必要となります。

そこで、本稿では、児童福祉法で規制されている認可外保育施設の概要を説明し、どのような場合にこの規制の対象となるかについて解説します。なお、本稿では、認可保育所、地域型保育事業、企業主導型保育事業及び地方単独保育施設は対象外とします。

 

第2 認可外保育施設に対する規制

児童福祉法(以下「法」といいます。)第59条の2は、認可外保育施設に対し、以下の内容を都道府県知事に届け出なければならない届出義務を課しています。

…施設の設置者は、その事業の開始の日…から一月以内に、次に掲げる事項を都道府県知事に届け出なければならない。

一 施設の名称及び所在地

二 設置者の氏名及び住所又は名称及び所在地

三 建物その他の設備の規模及び構造

四 事業を開始した年月日

五 施設の管理者の氏名及び住所

六 その他厚生労働省令で定める事項

特に認可外保育施設指導監督基準には、以下のとおり、9項目にわたって細かく基準が定められていて、施設においては、これらの基準の遵守が求められます(平成28年6月20日付け厚生労働省雇用均等・児童家庭局長作成に係る「認可外保育施設に対する指導監督の実施について」参照)。さらに、法は、届出対象施設を認可外保育施設指導監督基準に基づく指導監督の対象とし(法59条)、設置者に対し、都道府県への変更届出及び定期報告、保育内容等の掲示、利用者への説明及び書面交付(法59条の2ないし59条の2の5)を課しています。

以下で、主だった内容を抜粋しましたが、詳細は基準を確認してください。

➀ 保育に従事する者の数及び資格

・3歳児であれば幼児6人につき1人

・保育従事者の1/3以上は保育士

② 保育室等の構造設備及び面積

・6人以上の施設では、保育室、調理室及び便所があり、保育室は、乳児1人あたり1.65㎡以上であること

③ 非常災害に対する措置

・定期的な避難訓練の実施

④ 保育室を2階以上に設ける場合の条件

⑤ 保育の内容

⑥ 給食

⑦ 健康管理・安全確保

・児童の発育チェック

・児童の健康診断

・医薬品等の整備

・乳幼児突然死症候群の予防

⑧ 利用者への情報提供

・サービス内容を利用者の見やすいところに掲示しなければならない

・契約内容を記載した書面の交付

⑨備える帳簿

・職員に関する帳簿等

・児童の状況を明らかにする帳簿等

・労働者名簿、賃金台帳等

このように認可外保育施設となれば、児童福祉法による様々な規制を受けることになります。

第3 児童福祉法の規制対象

未就学児に対して幼児教育を提供する施設が児童福祉法の規制を受けるか否かについて、平成28年6月20日付け厚生労働省雇用均等・児童家庭局長作成に係る「認可外保育施設に対する指導監督の実施について」において、一応の考え方が示されています。

この中で、児童福祉法による規制を受けない例外的な場合として、「教育を目的とする施設の取扱い」が挙げられており、一応の基準が示されていることから参考になります。

幼稚園以外の幼児教育を目的とする施設(法第6条の3第11項の業務を目的とする施設を除く。)については、乳幼児が保育されている実態がある場合は、法の対象となる。

なお、乳幼児が保育されている実態があるか否かについては、当該施設のプログラムの内容、活動の頻度、サービス提供時間の長さ、対象となる乳幼児の年齢等その運営状況に応じ、判断すべきであるが、少なくとも1日4時間以上、週5日、年間39週以上施設で親と離れることを常態としている場合は保育されているものと考えられる。

幼児教育であっても、上記のように「1日4時間以上、週5日、年間39週以上」にわたって施設で親と離れることを常態としている場合は、「保育」と認定されてしまい児童福祉法の規制を受けることになります。つまり、このような態様で幼児を預かる施設では、認可外保育施設として届出が必要であり、上記の認可外保育施設指導監督基準も遵守しなければならないことになります。仮にこれを守らなければ、地方自治体の立入調査を受け、都道府県知事による勧告及び公表という措置を受けることもあります(法第59条)。

では、「1日4時間以上、週5日、年間39週以上」という基準を上回らない態様による幼児教育であれば、必ず認可外保育施設とされないかといえばそのようなことはありません。

あくまでも最低ラインとしての基準を示しているものに過ぎず、「プログラムの内容、活動の頻度、サービス提供時間の長さ、対象となる乳幼児の年齢等その運営状況」などを総合的に判断して、「保育」か否かの判断をされることになります。

その意味で、児童福祉法の規制対象になるか否かの明確な基準は示されてはいないのですが、幼児教育において、例えば1歳半より幼い乳幼児を対象にしている場合や教育カリキュラム自体がない場合などには、「教育を目的とする施設の取扱い」として児童福祉法の規制対象外とすることは難しいと考えられます。

第4 おわりに

述べてきましたように、最終的に児童福祉法の規制を受けるか否かの考え方には、基準が明確にされていない部分が大きく、行政裁量が大きいところでもあります。

新たに幼児教育事業に取り掛かる事業者におかれましては、児童福祉法に違反しないよう、専門家のアドバイスを受け、かつ行政への相談もしながら進めることが必要となります。

 

弊所では、保育関連事業に特化したリーガルサービスを提供しており、本稿で取り扱った分野についてもお手伝いもさせていただいております。

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