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2018-2-1 ウェブ上でのITサービス立ち上げの注意点③(資金決済法関連/「為替取引」とは?)

M&P Legal Note 2018 No.2-1

ウェブ上でのITサービス立ち上げの注意点③(資金決済法関連/「為替取引」とは?)

2018年3月1日
松田綜合法律事務所
弁護士 佐藤 智明

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第1 はじめに

前回の「M&P Legal Note 2017 No.1-1ウェブ上でのITサービス立ち上げの注意点②(資金決済法関連/LINE Payを参考に)」では資金決済法の代表的な規制である「資金移動業」と「前払式支払手段」について触れましたが、ウェブ上のサービスにおいては、様々な商品・役務等の取引が日々無数に行われています。これらの取引において代金や対価の支払いなどが生じる場合、その決済、送金方法にも、また様々な形態があります。

今回からは、前回触れた「資金移動業」(=為替取引)を少し掘り下げたうえで、これ以外の決済、送金方法にも焦点を当てながら、できるだけ規制の範囲がわかりやすくなるように、説明をしていきたいと思います。

1 送金とは

ウェブ上のサービスが現在ほど活発になる前において、我々にとって最も身近だった送金手段といえば、銀行振込があります。しかし、平成22年に資金決済法が施行されるまでの間、これは銀行法に基づき銀行業としての免許を受けた者のみが可能な「為替取引」と呼ばれる行為でした。

資金決済法が施行されている現在においては、前回ご説明した資金移動業者となることで銀行等以外の者であっても、為替取引を行うことが認められました(もっとも、資金決済法上の資金移動業者として行える送金業務は一回の取引の上限が100万円以内とされていることは前回で触れたとおりです。)

一口に“お金を送金する”、といっても、これには様々な形態が考えられます。巷にある各種の送金またはこれに準ずるサービスを提供している事業者も様々な手法を駆使しながら、事業を行っています。

前回の内容とも重複しますが、以下では、まず、銀行業や資金移動業としての免許・登録が必要な「為替取引」の意義をご説明します。そして、それにより現在の法律の下での規制範囲をできるだけ明確にすることで、規制がされていない決済、送金方法、および、それらが規制されていない理由を探ってみたいと思います。

2 為替取引とは

  • 法律上の文言

始めに、まずは法律上、「為替取引」という文言が使用されている規定をお示しします。

<銀行法第2条第2項第2号>

2 この法律において「銀行業」とは、次に掲げる行為のいずれかを行う営業をいう。

一 …

二 為替取引を行うこと。

<資金決済法第2条第2項>

2 この法律において「資金移動業」とは、銀行等以外の者が為替取引(少額の取引として政令で定めるものに限る。)を業として営むことをいう。

法律上、為替取引という用語は上記の銀行法・資金決済法において使用こそされていますが、その明確な定義や説明は見当たりません。しかし、以下で見ていくように、為替取引は判例において定義がされています。

  • 平成13年最高裁判例

前回も触れたように、判例で定義がされている為替取引とは、「隔地者間で直接現金を輸送せずに資金を移動する仕組みを利用して資金を移動することを内容とする依頼を受けて、これを引受けること、又はこれを引き受けて遂行すること」とされています(最決平成13年3月12日刑集55巻2号97頁。以下「平成13年判例」)。

この平成13年判例の定義に該当する典型的な例は、銀行を介しての振込送金です。このほかにも手形・小切手を利用した送金、電信を利用した送金など様々な種類の行為が、この定義には包摂されている、と考えられています(最高裁判例解説刑事編平成13年度 法曹会 48頁以下)。

 

  • 平成25年東京高裁裁判例

ア 平成13年判例の定義は、かなり広範なもので、実際に具体的サービスに立ち戻って検討する場合、多くの送金サービスが、この定義に当てはまる可能性があり、なかなか悩ましい部分が多いといえます。そのような状況の中、平成22年4月1日の資金決済法施行後の状況下において、為替取引の該当性が争われた事案として東京高判平成25年7月19日判タ1417号113頁(以下「平成25年裁判例」)があります。

この事案は、簡単に言うと、次のような事案です。

  • 送金代行業者Aが、振込依頼人Bから振込依頼を受けた金員について、
  • 送金代行業者A自らが開設・管理している銀行口座に振り込ませて販売代金等の受け入れを行い(集金代行業務)、
  • そこから手数料を控除して、既存の銀行の為替取引システムを利用して、自己の銀行口座から振込依頼人の指定する口座に金員を移動させる(資金移動業務)

という、「いわゆる送金代行業務」が為替取引に該当するか否かが問題となった事案です。

イ ここで問題になった「送金代行業務」が為替取引に該当するか否か、という点について、平成25年裁判例は「依頼人の資金を依頼人に代わって受取人に送金するようないわゆる送金代行業務は,銀行法にいう『為替取引』には該当しない」と判示しました。

その理由として、銀行法が為替取引を免許制の対象とした趣旨は、「資金授受の媒介をするにあたり,媒介となる機関において,直接現金を輸送することなく隔地者への支払等を確実にするための資金手当のシステムを確立するなど,利用者(顧客)との間で高度の信用を保持できる体制を構築することが求められることから,十分な信用を持たない者が当該取引を行えないようにすることにより,利用者(顧客)を保護し,かつ,金融の円滑の確保を図ることにある」、としたうえで、「依頼人の金員を一旦…口座に入金させるものの,その後は,銀行の為替取引システムを利用して…業務を行っていたものであり…独自に資金手当てのシステムを確立する必要はない…送金代行業務」は、為替取引には該当しない、と述べました。

第2 2つの判例を踏まえて

上記のとおり、平成13年判例だけをみると、資金を移動させることに関して、かなり広範に捉えており、資金移動に関連する多くのサービスが、「為替取引」に該当する可能性が高いといえます。そのため、平成13年判例だけを踏まえると、既存の安定的に行われていたサービス、例えば、収納代行や代金引換などについても、規制対象と解釈することも不可能ではないといえます。実際にも、金融庁の金融審議会金融分科会第二部会及び決済に関するワーキング・グループにおいて、明確な切り分けがなされていないまま、議論がなされているように見受けられます(金融審議会金融分科会第二部会)決済に関するワーキング・グループ報告 11頁以下)。

この点に関連して、平成25年裁判例では、銀行法上、為替取引が規制されている趣旨にさかのぼって「為替取引」該当性を限定的に解釈した点で注目に値します。

しかし、資金移動それ自体は、隔地者間における資金授受の媒介という重要な経済的機能を果たすもので、資金移動の媒介者と送金依頼者との信用関係が不可欠なものです。そのため、為替取引を業として行う者が十分信頼できるような制度にしなければ利用者保護に欠けることになってしまいます。

平成25年裁判例も、あくまでその考え方の枠内において、具体的事案で問題になった送金代行業務が、銀行法で求められる規制の趣旨からは外れるサービスとして、為替取引には当たらない、と判断したものといえます。したがって、平成13年判例は、平成22年4月1日に資金決済法施行前の判例であるものの、現在も実務上は重要な意義を有するといえるため、実際のサービス設計においては、注意が不可欠といえるでしょう。

 

次回は、為替取引に該当する可能性があると思われる最近の事例や、その他の具体的なサービスなどを見ながら、為替取引として規制される範囲をよりイメージできるよう、さらに説明をしたいと思います。

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